こんにちは、おんちゃんです。
おんちゃんの実家は、岩手県の宮古市にある。
震災の津波で流されてしまい、数年前に新しく建てたのだ。
はや坊が、はじめて宮古に行ったのは、この新築の家だった。
かなり気をつかった。
新築のお家に、粗相があってはいけない。
入念にブラッシングして、きれいにシャンプーして、オムツを用意して行った。
万全を期して宮古へ向かった。
お母やんは、不安だった。
息子夫婦が、犬をつれてくる?
いままで、犬といえば番犬しか見たことがないよ?
家の中に犬がいる・・・、それっていったいどういうこと?
本当に大丈夫なの?
もしも、その犬がヤンチャで、お家をひっかきまわしたらどうしよう?
その時は、悪いけど町のペットホテルに預けてきてもらおう。
それがいい、それがいいと言いました、まる。
果たして、はや坊は、いい子だった。
ちらかしたり、吠えたりせず、フスマが開いていても仏間には入らなかった。
お父やんは無条件に、きゃっきゃきゃっきゃと猫可愛がり。
お母やんは、ひかえめに。
はや坊は、早い段階でこの家になじんでいた。
そして帰るとき、
はや坊は、お母やんの心をつかんだ。
それからは、もう安心してはや坊は迎えられるようになった。
お母やんが亡くなった。
誰に迷惑をかけることなく、お母やんらしく、静かに控えめに逝った。
最後に会ったのは、今年の春。
みんなでチョコフォンデュをしたら、「手がとまらない」と、恥ずかしそうに笑いながら、いっぱい食べていた。
まだまだ元気でいるものと思っていた。
お母やんは、自分なりのいい距離感で、はや坊と付き合っていた。
お母やんは遠いところへ行ってしまった。
お母やんには、もう会えない。
――あとがき
少し前に、母が亡くなりました。
親が亡くなると『ああしておけばよかった』『こうしてあげればよかった』と思うものだと、人は言いますが、確かにその通りです。
「もっと色々と、楽しい思いをさせてあげれたのにな」という、後悔の思いが浮かんできます。
できた息子ではなかったので、心配させたり呆れられたり、良くないこともそこそこありました。
それでもお母やんは、いくつになってもずっとかわいがってくれました。
たいした恩返しはできませんでしたが、空の上で「ありえー」とか言いながら、はにかんでいてくれてたら、嬉しい。
そして、「わりえーおもっつぇー人生だったがや」と思ってもらえていたら、嬉しい。
お母やんが、向こうで心配しないように、ちゃんとした生き方をしていかなければ。