こんにちは、おんちゃんです。
一件落着かに見えましたが、そこからまた思わぬことに・・・。
最終話、どうぞ。
前回までのお話
恩茶乃介と朴斎の一連の話が、たいした話だってんで、細川家中でも噂になり、とうとうお殿様の耳にも入りました。
「まことに天晴である。」ってことで、恩茶乃介はお殿様にお目通りすることになりました。
そして、『例の茶碗はこれでございます。』と、茶碗も持参したところ・・・。
たまたまその場にいた、細川家お抱えの目利きが、「殿、ちいとそれを拝見しとうございます。」とはじまった。
すると、
「殿、大変でございます! この茶碗は『井戸の茶碗』にございます!!」
「なななななにぃ!!これが『井戸の茶碗』か!!高木恩茶乃介!!、この茶碗は余がもらい受ける!!三百両でどうじゃ!!」
こうして、恩茶乃介のところに三百両の小判が舞い込んでしまいました。
『もともとあの茶碗は、朴斎殿から渡されたもの。』
「嫌な予感・・・」
『なぁ、くず屋よ、』
「勘弁してくださいよ! 五十両でもって、あの騒ぎですよぉ!!」
「そんで、あっしは斬られそうになったんですから。それが、百五十両となれば、今度は大砲で撃たれちゃいますよ。」
『そう言わずに、話だけでもしてきてくれぬか?』
「そうですかぁ・・・」
「それだったら、お願いですから、また何かカタに差し出してくださいよ。」
「でも、今度は茶碗とか掛け軸とか、南蛮渡来なんてダメですからね!」
「そうでないと、また行ったり来たりになって商売に行かれなくなっちゃいますから―」
しばらく考え込んだ朴斎、そして口から出た言葉は、
『くず屋さん、高木恩茶乃介殿は独り身かな?』
「へぇ、そうでございます。」
『ならば・・・』
『承知していただけるなら、百五十両は支度金として頂こうと思うが、いかがであろう?』
「なんと!!それは結構な話じゃございませんか!!」
『もらってくれるだろうか?』
「もらいますもらいます!!あちらがもらわないなら、」
「さっそく話してきますんで!!」と、恩茶乃介のところへすっ飛んできました。
『受け取ってもらえたか?』
「えぇ、でもまた向こうからくださるものがあります。」
『またか、今度はなんだ?茶碗か?掛け軸か?まさか南蛮渡来の・・・』
「いいえ、そんなもんじゃありませんよぉ!!びっくりしますよ!」
『何もいらぬと申すのに、朴斎殿にも困ったものだなぁ・・・』
「朴斎様にお嬢さんがいらっしゃるんですがね、花嫁修業も終わっていて、器量もなかなかのもの。」
「そろそろ年頃だってんで、ぜひとも恩茶乃介様に嫁がせたいって・・・」
「もし承知してもらえるなら、支度金としてお金は受け取るという事でございます。」
今度は、恩茶乃介がしばらく考え込んでから、しゃべりだしました。
『そうか・・・』
『朴斎殿、大事な娘さんを私に嫁がせたいと・・・』
『そうか・・・』
『母にもずっと言われておるしなぁ・・・』
『そうか・・・』
『朴斎殿の娘さんとあらば、さぞやしっかりした人であろう・・・』
『そうか・・・それならば、ありがたく妻をめとらせていただくか。』
「めとんなさいまし、めとんなさいまし!!」
「こんないい話はございませんよ!!」
「あのね、今は裏長屋にいるんで、くすんでいますけどね、こちらへ連れてきて磨いてごらんなさい。」
『いや、磨くのはよそう・・・』
どんどはらい。
――あとがき
もとになったのは、「井戸の茶碗」という話で、古今亭志ん朝師匠が得意としていました。
最近のお笑い芸人のネタを見ると、「テンポや間が素晴らしいな」と感じることが多いですが、志ん朝師匠の落語は、もうそれが完璧です。
私の技術では、それを表現しきれなくて、とても悔しいのです。
そして、ストーリー自体にも隙がないので、ほとんどアレンジを入れることもできませんでした。
やっぱり、落語っていいですね。
長くなってしまいましたが、最後までお付き合いくださって、ありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします。
コメント
おもしろかったです。
落語スゴい。
ありがとうございます。
またそのうち落語のヤツ描きますので、よろしくお願いします。