こんにちは、おんちゃんです。
どういう経緯で、はや坊を家族に迎えることになったか。
今回は、そのきっかけの巻。
今から4年前の夏、仕事で数週間ほど、気仙沼に行くことになった。
この年の夏は、とても暑かった。
当時は、特に犬には興味がなかった。
そして、わが家にはパーウーという名のウーパールーパーがいて、癒しを担当していた。
パーウーは、いつも笑顔だった。
パーウーをおばちゃんに託して、気仙沼へ。
気仙沼では、何軒か宿が替わったのだが、その最後にお世話になった宿でのこと。
それまでは、「古くて味のある民宿」が続いていたが、今度の民宿は震災後に建てられたものらしく、まだ新しくて綺麗だった。
そこに、犬がいた。
庭の隅に大きめの犬小屋があり、そこから5メートル位のリードでつながれていた。
おそらくシベリアンハスキーのミックス。
けっこうでかい。
いっしょに泊まった同僚が、「けっこうおとなしいよ」と言いながら、撫でていた。
どれどれ、
本当におとなしい。
いや、おとなしいんじゃない、無反応なのだ。
どこか一点を見つめたまま、全く動かない。
目線さえもよこさない。
妙に気になって、それから事あるごとにちょっかいをかけてみた。
朝起きた時。
宿に帰ってきた時。
晩ご飯を食べた後。
酒盛りの途中で。
色んなタイミングで、その犬を撫でに行ったが、相変わらず無反応のまま。
「震災の時、大変な経験をしてしまった犬なのだろうか?」
なんて勝手に想像して、よけいにほっとけなくなったりして。
しかし、一度も反応することなく、宿泊の最終日になった。
作業から帰ってくると、アイツはいつもの場所で寝そべっていた。
今日が最後のチャンス、こうなりゃこっちも意地だ、思い切り撫でまわしてやるか。
「ってやんでぇ、おぅ、こちとらなぁ、おめぇさんに一回でもいいからこっち見てほしくて、何回も来てんじゃねーか。」
「えぇ、それをなんだい、おめぇさんは。 ずっとそっぽ向いたままじゃねぇかよ。」
「それともなにかい、おいらは面倒くさいだけだったってのかい? なぁ一回でいいんだよ一回で、後生だよ。おめぇさんにゃあ人情ってものがないのかい?」
調子に乗って、江戸っ子になりながら近づいてみた。
すると・・・。
尻尾を振った。
相変わらず目線はどこかを見つめたまま、本当にわずかだが、確かに尻尾を振った。
♪ 初めて恋した時のような、新しい世界 ♪
何とも言えない、不思議な気持ちになった。
次の日の朝も、少しだけ尻尾を振ってくれた。
「また来るからな」
数か月後に転職し、気仙沼に仕事で訪れる事は無くなった。
でも、その時の事が忘れられず、とうとうある日、おばちゃんに切り出すのだった。
つづく。