先日、仕事中の事故で、大切な友だちが亡くなった。
誰よりも、安全作業に対する意識は高い人だった。
なぜ、こんなことになってしまったのか。
彼とは、6年ほど一緒の会社で働いた。
私より1つ年下だったが、とても尊敬できる人だった。
仕事ができて、人当たりもよく、みんなからも頼りにされていた。
いつも失敗ばかりする私を、色々とフォローしてくれていた。
私は、その会社を3年前に辞めた。
それからは、彼とはたまに会う程度になっていたが、ずっと私の事を気にかけてくれた。
大きく収入が減った私に、道具や作業服など、色々くれた。
「家の中で、ジャマになってるから、悪いけどもらってくれない?」
そう言って、申し訳なさそうな顔をする。
飲みにも誘ってくれた。
「こっちまで、わざわざ電車で来てもらって悪いから、ここはオレに支払わせて」
そう言って、わざと自分の家の近くの店を予約する。
そんな、気を使わせまいとする心遣いが、とてもうれしかった。
彼は、はや坊にも会ったことがある。
まだ、ケージの中にいたころだった。
部屋に入ってきた彼をみて、はや坊はよほど遊びたかったのか、よじ登ってケージを超えようと必死にジタバタした。
その姿を見て、彼は大笑いしていた。
最近私はまた転職して、彼の会社と敵対する会社に入ることになった。
電話でそれを伝えると、
「うちの会社に戻ることは、頭にない?今からでも・・・」
そう言ってくれた。
でも私は、あの会社はどうしても信用できなくて、その選択肢はなかった。
それを伝えると、
「まぁ、そうだろうね」
彼も、今の会社には不信感や諦めの気持ちしかないと言っていた。
そんな、矢先に事故は起きた。
お通夜の席で奥さんから、あの電話が来たことを喜んでいたと聞かされた。
涙がとまらなかった。
彼が亡くなる一週間ほど前に、メールが届いた。
その最後は、こう綴られていた。
「おたがい若くないんだから、無理せずに頑張りましょう。」
もう彼は帰ってこない。
美人で聡明な奥さんと、可愛くてしっかりした小学生の娘と、まだ歩き始めたばかりの、そっくりな息子をのこして、彼はいなくなった。
神様はいない。
それでもどうか、彼の魂が安らかであるよう、また残された家族に、もう悲しみがおとずれることがないよう、願ってやまない。